南アルプス・黄蓮谷右俣~甲斐駒ヶ岳

2009年9月19日(土)昼~22日(祝)

パーティー:O夫妻、Wさん、私(記)

<はじめに>

 黄蓮谷右俣は真に「日本百名谷」の名に値する名谷である。29年前の10月、無謀にも単独で尾白川渓谷道経由で目指すが、黄蓮谷出合を約1時間行き過ぎ、不安よりそのまま本谷遡行し、鋸岳縦走し、戸台へ下山した。次は、14年前の10月、4名で、荒廃した尾白川渓谷道に非常に苦労しながらも、千丈の滝上まで達したが、不注意で滑落負傷し、黒戸尾根5合より下山となった。今回、若干背伸びかとは思ったが、願ってもない機会なので参加させてもらうことにした。

<9月19日(土)>

 昼前に離阪、日向山登山口にて、家内特製のおでん宴会後、車中&テント泊。

<9月20日(日)>

 3:30起床、4:30出発。林道終点(5:55)より固定ロープにすがりながら、尾白川河原へ。夫婦滝、梯子滝と過ぎ、遠見ノ滝は、左から大巻き。噴水ノ滝、花岩、獅子岩、三丈ノ滝と見所満載、黄蓮谷出合へ(9:30)。初めての人は、ここまでの渓谷美だけでも、心底来て良かったと思うことだろう。入ってすぐの滝は、左方のロープに惑わされず、右から巻く。千丈ノ滝40mは1段目を右ブッシュから越え、左の巻き道へ。ここまでは、巻き道踏跡は比較的明瞭でも、目印類は殆んどなかった。次の8m滝は、右巻きに極上テン場があるが、左へ上がって、五丈の沢のナメ滝を渡り(前回はここから10m滑落負傷)、固定ロープで樹林帯へ(10:50)。

 いよいよ、ここからは未知の領域だ。坊主ノ滝40mは、

右沢踏跡へ入り大岩乗越しを2度、左方樹林を進み、固定ロープ・太枝にぶらさがるように一段下って落ち口に立つ。できれば、少し上方を巻いた方が心臓に良い。幅広滝15mは、

右端の溝状草付きを登るが、上部で左へ一段出るところが少しキツイ。後は踏跡を辿って左右俣出合のすぐ上に降りた。出合のナメ滝を歩けなくて少々残念。

 すぐ目の前には、問題の20m滝。

右ルンゼは上部トラバース怖い、左壁は上部乗越しショッパイ、水流すぐ右は案外容易とのことで、Oさんトップで取り付く。ヌルっていて、それなりに細かく、上部で左草付きに一段這い上がるのだが、ロープをつかんでしまった。しばらく進むといよいよ奥千丈ノ滝100mの最下段が見えてくる。

 手前の河原と左上の草付きを整地して、テントとツェルトを張る(13:30)。さいわい焚き火も盛大に燃え上がり、のんびり楽しい夕餉となった。

<9月21日(祝)>

 4:00起床、5:30出発。朝一番からいきなり奥千丈ノ滝最下段20mの直登、右手の緩い左上バンドを落ち口に出るのだが、上部がヌルってやや細かく、少々ビビル。続くトイ状滝20mは左草付きガリーに入り、上部にて垂らしてもらったシュリンゲ頼りに右へ出るが悪い!とうとうロープ付けてもらって頭上のブッシュを経てちょうどトイ状滝落ち口へ。足下のトイ状滝直登の方が容易だったかも。

 続いて凹状ナメ滝をOさんトップで1ピッチ。楽勝に見えたが、ヌルって細かい個所もあり、滑ると最下段まで行きかねないところ。途中、左上方から上半部大スラブ滝が音もなく滑り込んでくるが、直登は論外、

 右端の草付きクラックをもう1ピッチ伸ばしてブッシュへ。

 開けた左方へ出て、固定してもらったロープ頼りに草付き割れ目を左上、

 さらにロープ確保で高度感あるスラブをおっかなびっくりトラバース後、一段シュリンゲにすがリ降り、ようやく奥千丈ノ滝を足下にした(8:00)。

 すぐ次の積み木状滝は階段状で容易だ。

 次の緩いトイ状ナメ滝はOさんトップで直登、ここも上部がみかけによらずショッパイ。

 次の緩いトイ状ナメ滝は念のためロープを張るが、比較的容易だが、結構ヌメっていて、ええい面倒だ、と2回ほどロープをつかんでしまう。

 次の逆くの字滝(下半部しか見えない)はOさんトップで直登、下半部の中程より、左方のクラック(ここはキビシイ!)からスラブをブッシュ帯へ。

 少し上がってから右へトラバースし、上半部を懸垂&トラバースして左岸ブッシュに渡る(11:20)。

 ここで水筒に水を詰める。時間的余裕があれば、あくまで沢芯通しに詰め上げたいところだが、そのまま、左岸踏跡をひたすら登って行く。奥の滝は、一旦右沢に入ってから、ブッシュ帯の踏跡をひたすら巻き登り、とうとうハイマツくぐりにしばし耐えた後、ようやく沢芯に下り着く。

 そのころより、ひどくなってきた右アキレス腱痛とバテの2重苦にペースが落ち、情けなくもOさんのストックを片方拝借する羽目になるが、幸いやぶこぎもなく甲斐駒ヶ岳山頂直下の登山道に踊り出た(15:50)。

 入渓点から標高差1600m、丸2日、充実の遡行であった。暗くなる頃、7合目テント場にバテバテで到着、ラーメン1/2個を食べるのがやっとであった。

<9月22日(祝)>

 黒戸尾根をひたすら下って竹宇駒ヶ岳神社へ、タクシーで日向山登山口へ戻る。

<おわりに>

 殆ど諦めていただけに、嬉しかった。欲を言えば、紅葉最盛期に、とか、奥千丈ノ滝中段テラスでのんびり、とか、一滝くらいトップで、とか、これは贅沢過ぎというものだろう。まさに日本の名渓というに相応しい、沢ノボラーいち押しの谷であった。




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